一般社団法人
日本細胞生物学会Japan Society for Cell Biology

コラーゲン・ゲル培養法

author水島 寛人
所属阪大微研細胞機能分野
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Keyword細胞増殖測定
Published2011-10-04Last Update2011-10-04
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概要・原理

接着性細胞に対する増殖因子の増殖促進活性は、プラスティック・ディッシュを用いた培養系では困難な場合が多い。コラーゲン・ゲル培養法を用いることにより、様々な増殖因子の増殖促進活性を、容易に検出することが可能である。

装置・器具・試薬

  • ・コラーゲン・タイプIA(新田ゼラチン)*
  • ・再構成バッファー;2.2% NaHCO3、0.2 M HEPES、50 mM NaOH**
  • ・10 × DMEM-Ham’s F12 (1:1)培地***
  • ・Collagenase Type I (Gibco, Cat. No. 17100-017)
  • ・HBS (+)
  • 10 mM HEPES pH7.3, 140 mM NaCl, 4 mM KCl, 1.8 mM CaCl2, 1 mM MgCl2
  • ・固定・染色液;0.1 Mクエン酸、0.1% クリスタルバイオレット*酸可溶性コラーゲンは、室温以上で中和すると直ちにゲル化するため、常に氷で冷やしておく。
  • **フィルター滅菌後、凍結保存。短期であれば4℃でも保存可能。
  • ***フィルター滅菌後、4℃にて保存。

詳細  *それぞれの写真をクリックすると拡大します。

    • 細胞をトリプシン-EDTA処理する。
    • 血清含有培地でトリプシンの反応を停止し、なるべくsingle cellとなる様によく細胞を懸濁する。
    • 細胞懸濁液をチューブに入れて遠心後、細胞をフレッシュな血清含有培地で懸濁し、細胞数を測定する。
    • 必要数の細胞注1)をチューブに入れて遠心にて細胞を回収する。注1:至適細胞数は細胞の種類により異なるため、予備実験を行う必要がある。
    • チューブに0.2 mlの再構成バッファーと0.2 mlの10 ×培地を入れ、氷で十分に冷やす。
    • コラーゲン溶液を1.6 ml加え、均一になるようにボルテックス・ミキサーを用いて撹拌する。
    • 細胞懸濁液を20 μl(ゲルの1/100量)を加え、均一になるようにボルテックス・ミキサーを用いて撹拌する
    • 5秒ほど遠心する(この操作により、大きな気泡は浮き上がる)。
    • ピペットマンを用いて、ゲルを0.5 mlずつ24ウェル・プレートに加える(ゲルは粘性が高いためチップに残り、最初は完全にゲルを出し切るのは困難。2~3回ピペッティングして、押し出されるゲルとチップに残存するゲルを平衡化させてからプレートに入れる。ピペッティングをして、チップから気泡が出なくなるのが目安)。
    • 37℃にてゲル化させる(10分程度でも十分にゲル化する)。
    • 1 mlの培地注2)を添加し、一定期間培養する注3)。注2:添加する培地に含まれる血清の至適濃度は、細胞の種類により異なる。1~10%の濃度で予備実験を行う必要がある。血清の濃度は、ゲルの体積(0.5 ml)も考慮して調節する。注3:培養を開始すると、ゲルに含まれている気泡が膨張してくるが、数日で消えるため、あまり問題にならない。
    • 培養終了後、ピンセット等を用いてゲルを1.5 mlチューブに移し、 0.5 mlのコラゲナーゼ溶液(0.05% Collagenase Type I/HBS (-))を加え、ゲルが消化されるまで時々撹拌しながら37℃で反応する(30分程度で消化される。時間がかかっても良い場合は、コラゲナーゼの濃度を下げても可能)。
    • 遠心(1,200rpm、5分)により細胞を回収し、適当量の固定・染色液を加える注4)(固定・染色液を加えたサンプルは、1週間程度であれば室温で保存しても問題ないため、都合の良いときに測定が可能)。注4:使用する固定・染色液の量は実験により異なる。
    • 4. ボルテックス・ミキサーを用いて激しく撹拌し、細胞膜をなるべく破砕してから染色された核の数を測定する。

工夫とコツ

  • 用いる細胞は、アッセイ当日に対数増殖期になるよう、前日に撒き直す。
  • 至適細胞播種数、血清濃度、培養期間は細胞種により異なるため、予備実験が必要。
  • 軟寒天培地を用いたSoft agar colony assayでも増殖因子の作用を検出することが可能である。軟寒天培地を用いた培養方と比較して、コラーゲン・ゲル培養法は高価であるが、いくつかのメリットがある。1)培養期間が短い。2)細胞数を測定できるため、定量性が高い。3)Lysis bufferによりcell lysateの調製が可能なため、生化学的解析が可能である。4)生細胞の回収が可能なため、再度培養することが出来る。

参考文献

  • 新田ゼラチンホームページ http://www.nitta-gelatin.co.jp/ Mizushima H, Wang X, Miyamoto S, Mekada E. J Cell Sci. 122:4277-4286 (2009)