一般社団法人
日本細胞生物学会Japan Society for Cell Biology

マウスの灌流固定法

author國井 政孝
所属大阪大学医学系研究科細胞生物学教室
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Home Pagewww.med.osaka-u.ac.jp/pub/acb/
Keyword灌流固定, PFA, Karnovsky
Published2011-09-02Last Update2011-09-02
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概要・原理

組織固定はパラホルムアルデヒドやグルタールアルデヒドによって組織中の分解酵素を失活させ、それ以上の変性を防ぐと同時にペプチド鎖の架橋結合によって形態を維持し、細胞・組織を自然の状態に近いまま安定化することを目的とする。

装置・器具・試薬

  • 〔器具〕【fig.1,2】
  • 解剖道具一式(解剖台、はさみ、ピンセット、ノエス剪刀)
  • ペリスタポンプ、チューブ(Cole-Parmer instruments)
  • 23G注射針
  • ビーカー(PFA用、Ringer用、DW用)
  • 〔試薬〕
  • 麻酔薬:ネンブタール(大日本住友製薬)やドルミカム(アステラス製薬)など。PBSまたはRat リンゲルで1/10に希釈して使用。 ヘパリン:持田製薬ノボへパリンなど。PBSまたはRat リンゲルで1/10に希釈して使用。 Rat リンゲル(150mM NaCl, 5mM KCl, 4mM EGTA, 5mM HEPES pH7.4, 1mM glucose, 6mM MgCl2, 0.5mM NaH2PO4)
  • 固定液(3% PFA / 0.1M phosphate bufferや1/2 Karnovskyなど)
  • *PFAは出来るだけ直前に調整する→粉末のPFA(nacalai tesqueなど)をDDWに溶かして10%PFAになるように直前に(長くとも2,3日前までがよい)作る。PFAは室温では溶けないので60度以上70度以下で温める+濃いNaOH溶液をすこしずつ入れて粉末PFAが溶け残るか溶け残らないか位の所でNaOHを入れるのをやめる(あまり入れ過ぎるとpHがアルカリ性になりすぎるため)。
  • *1/2 Karnovsky (2.5% glutaraldehyde, 2% paraformaldehyde, 0.1M cacodylate buffer)
  • glutaraldehydeはnacalai tesqueから市販されている25% glutaraldehyde (500g)などを使用(他のでもよいがこれが一番安価で特に問題なく使える)。

詳細  *それぞれの写真をクリックすると拡大します。

    • ビーカーに入れたリンゲル液と固定液をお湯で40℃くらいに温めておく(マウスの体温が40度位のため、それに合わせる)。
    • マウスに麻酔液を腹腔内投与(体重の1/100量)し、痛み刺激に反応しなくなったら、解剖台に仰向けに固定する。【fig.3,4】
    • 開腹後、横隔膜を切開し、左右の肋骨を頭部方向へ切開する。
    • 剣状突起をつまんで頭部方向へ反転し、針で止め、心臓を露出させる。【fig.5】
    • 左心室にヘパリンを0.05-0.1 ml注入し、ノエス剪刀で右心耳を切る。【fig.6】 *この段階が一番大事。そのためには、ファイバー光源できちんと右心耳に光を当てて見やすくし、きちんと右心耳を見つけて、ちゃんと割を入れられるようにする(あまり割が小さいと還流液が体内にとどまって流れず、固定が不十分になってしまう)。また他のところ(右心室など)を切らないようにする。
    • チューブにつけた注射針を左心室に刺し、流量6~7でリンゲルを流す。針の先端に書いたマジック線の1本は外から見える深さに挿入する。【fig.7】
    • いったんポンプを止め(チューブに泡が入らないようにする)、チューブの先をリンゲルから固定液に入れ替える。流量6~7で固定液を流す。
    • 各組織を摘出し、固定液に浸けて後固定する。

工夫とコツ

  • 23G注射針には先端にマジックで2本線を引いておき、針を左心室に、1本の線が外から見える深さまで挿入する。 *2本線を書かないと針を刺し入れた長さが分からない。 **週令が若いマウス(4週令以下)ではその体の大きさに応じた直径の注射針を使う(1週令で25G位)。
  • 開胸する(横隔膜や肋骨を切開する)と呼吸が出来なくなるので、開胸後からはできるだけ素早く作業する。
  • リンゲルによる脱血は肝臓の色や右心耳からの流出液の色で判断する。流出液が透明になったらポンプを止める。透明になってから長時間流すと組織が虚血に陥る。
  • 固定液を流して全身が硬直したことを確認。流量はマウスのサイズによるが、50~100 ml程度 流し終えたら、チューブにDWを入れて洗ったあと空気を通して空にして保存
  • 後固定は組織の大きさや細胞種により2時間~。過固定を防ぐため出来ればovernightは避ける。

参考文献

  •  理化学研究所ゲノム科学総合研究センター 編集  細胞工学別冊 マウス表現型解析プロトコール 秀潤社
  • 井関祥子、太田正人 編集 実験医学別冊 免疫染色・イメージングのコツ 羊土社

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