一般社団法人
日本細胞生物学会Japan Society for Cell Biology

ホスホイノシタイド測定方法

author浅沼 研、高須賀 俊輔、佐々木 雄彦
所属秋田大学大学院医学系研究科
Home Pagewww.med.akita-u.ac.jp/~bisei/
Keywordホスホイノシタイド、PI3K、Bligh-Dyer法
Published2012-04-09Last Update2012-04-09
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概要・原理

ホスファチジルイノシトール(PI)のイノシトール環3位、4位、5位水酸基は、様々なリン酸化酵素や脱リン酸化酵素の働きにより、可逆的なリン酸化の修飾を受ける。リン酸化の組合せによって生ずる7種類ホスホイノシタイドが、細胞に存在する(Fig.1)。
本ページでは、マウス胎児由来線維芽細胞を用いたホスホイノシタイドの定量方法について述べる。まず細胞を[3H]myo-inositolでRI標識し、その後Bligh-Dyer法により細胞からリン脂質を抽出する。抽出したリン脂質を脱アシル化して生成したイノシトールリン酸を、陰イオン交換カラムを用いた高速液体クロマトグラフィーにより分離する(Fig.2)。各イノシトールリン酸が溶出されるフラクションの放射活性を測定し、それぞれのホスホイノシタイドを定量するものである(Fig.3)。

装置・器具・試薬

詳細  *それぞれの写真をクリックすると拡大します。

    • 15cm dishに細胞を播き込む8×105cells/10ml of Medium(inositol-free、10% dialyzed FBS)
      ↓ 4hインキュベーション(inositol starvation)
      ↓ 100μCiの[3H]myo-inositolをdishに加えてRI標識開始
      ↓ 72hインキュベーション(※1)
      ↓ Mediumを除去
      ↓ 10mlの氷冷PBS(-)でrinse×2回
      ↓ 10mlのMedium(inositol-free、FBS-free、0.1% BSA)を加える
      ↓ 2hインキュベーション(FBS starvation)
      ↓ 10% FCS、5min刺激
      ↓ on iceにてMediumを除去(※2)
      ↓ 10mlの氷冷PBS(-)でrinse×2回(※3)
      ↓ 800μlの2% HClO4を加える
      ↓ セルスクレーパーで細胞をかき集め15ml tubeに入れる(※4)
      ↓ tubeに3mlのCHCl3:methanol=1:2を加える
      ↓ vortex、30sec(※5)
      ↓ 室温(以下RTと表記する)、10minインキュベーション(※6)
      ↓ 1mlのCHCl3と1mlの2% HClO4を加える
      ↓ vortex、30sec
      ↓ 3,000rpm、RT、2min遠心
      ↓ 3層に分離するので上層(水層)と中間層(タンパク層)を除去
      ↓ 下層(有機層)に1mlのCHCl3-saturated 0.5M NaCl/1% HClO4を加える
      ↓ vortex、30sec
      ↓ 3,000rpm、RT、2min遠心
      ↓ 2層に分離するので下層(有機層)を新しい2ml tubeに移す
      ↓ evaporatorで遠心乾固
      ↓ 1mlの40% methylamine:H2O:methanol:n-butanol=24:16:40:10を加える(※7)
      ↓ 53℃で1hインキュベーション(脱アシル化)
      ↓ evaporatorで遠心乾固
      ↓ 800μlのH2Oと800μlのn-butanol:petroleum ether:ethyl formate=20:4:1を加える
      ↓ vortex
      ↓ 3,000rpm、RT、2min遠心
      ↓ 2層に分離するので下層(水層)をevaporatorで遠心乾固
      ↓ 130μlの10mM (NH4)2HPO4を加えてピペッティング
      ↓ 0.45μmのフィルターで濾過
      ↓ 濾過したサンプルから1.0μlをとり、液体シンチレーションカウンターで放射活性を測定する
      ↓ 比較するサンプル間のinputが揃うよう計算して10mM (NH4)2HPO4で適宜希釈(※8)
      ↓ HPLC Run(Fig.2)
      ↓ 検出器にて放射活性を検出(Fig.3)

      Fig.3 ホスホイノシタイドの定量クロマトグラムの解説

      サンプル間のデータを比較するにあたり、各フラクションの放射活性が数値化された生データをノーマライズする必要がある。まず25.1~120分までの各フラクションの放射活性合計値を算出し、その値が1,000,000CPMになるように補正する。その後、三点移動平均法によるデータのsmoothingを行い、クロマトグラムに起こしている。
      また、各ホスホイノシタイドの溶出位置は、使用するカラムのロットによって若干異なる。当研究室においては、in vitroで酵素反応により作製した標準品を用いて、各ホスホイノシタイドの溶出位置を同定した。
      野生型マウス由来線維芽細胞を用いた本実験系においては、PI5P, PI(3,5)P2, PI(3,4)P2の存在量は検出限界以下である。また、PI(3,4,5)P3の細胞内存在量は定常状態では非常に低く抑えられているが、ホルモン等の増殖刺激に伴い一過性に産生され、その後速やかに代謝・分解される事が知られている。本実験系においても、血清刺激に伴い 細胞内でPI(3,4,5)P3が産生され顕著に増加している事が確認出来る。

工夫とコツ

参考文献