一般社団法人
日本細胞生物学会Japan Society for Cell Biology

Vol.17 April (1) はじめまして、平岡です

平岡 泰 (情報通信研究機構)

 このたび、今本さん・水島さんと共に、学会の幹事を務めることになりました。中野会長から打診があった時、「私では務まりません」と固辞はしたのですが、(中略)、引き受けることになりました。その後、今本さんが打診を受けて、彼女は「私と平岡さんでは学会がつぶれます」と私を巻き添えに固辞したそうで、身に余る光栄です。かくも承知の上で、なお幹事をやれということであれば、やらぬわけにはいかないと思います。

 とはいうものの幹事になって幾つかの職務をこなしました。最初の仕事は、会員名簿の流出問題でした。流出のせいで、(中略)、皆さん勧誘の電話に悩まされているようなので、私の手をいくつか紹介することにします。

 (事例1)割に気に入っている手
私「今、仕事中なので、そのような話はできません」
勧誘「お仕事が終わってから、お話しさせてください。いつ終わりますか」
私「科学者の仕事に終わりは無いんです」(電話切る)

 (事例2)納得しないで欲しい手
勧誘「でも、お金もうけたいでしょ」
私「もうけたくありません」
勧誘(しばし沈黙の後)「お仕事は何ですか」
私「科学者です」
勧誘「ああ」(電話切れる)

 
(事例3)機械音声の振りをする手
勧誘「・・・に興味ありませんか」
私「全く興味ありません」
以後、先方が何を言っても、抑揚なく単調に「全く興味ありません」だけを繰り返す。かみ合わないことが重要。電話が切れるまで繰り返す。

 
(事例4)危険なのであまり勧めない手
(カーペットクリーニングの勧誘に対して)
勧誘「カーペットクリーニングいかがですか」
私「ちょうどよかった。すぐ来てくれ。カーペットが血まみれなんだ。警察が来る前に片付けてくれ」
勧誘(しばし沈黙の後、電話が切れる)
相手に電話を切らせるのが上級編ですが、皆さん、くれぐれも名簿を売らないでくださいね。

 

 次に引き受けた仕事は、男女共同参画学協会連絡会の担当です。私はあまり適任ではないと思うのですが、(中略)、やってみます。どうも老若男女に関わる問題意識が希薄な気がして心配です。ただ、女性が働きやすい職場環境というのは、男性にとっても働きやすい人間的な環境だと思います。

 さて、次の仕事です。昨今、色覚バリアフリーの啓蒙が進んでいますが、この機会に相貌失認バリアフリーを提言したいと思います。実は、私には軽い相貌失認があるらしく、顔の認知に若干の困難があるようです。登場人物が見分けられなくてストーリーが追えないため、ドラマが見られません。このような人は50人に1人くらいおり、重度の人は家族の顔も認知できないそうです(それ以外の知的障害は無いにもかかわらず)。人と接する場面で少し困ることがあります。何度も顔を合わしているはずの人でさえ、認知していないことがあり、無視されたように思う人もいるようです(介護者が付き添っている時はこっそり教えてもらうのだが)。見覚えがあるが名前が思い出せないのではなくて、見覚えがない。顔が認知できないだけで、名前がわかればその人物は記憶しているし、見覚えて一度意識に定着した認証済みの顔は忘れない。そこで対策として、旧知と思っても初対面のつもりで名乗る(相貌失認でない人は、からかわれていると思うかもしれない)。学会では期間中ずっと同じ服を着続けてもらえるとありがたい(できれば一人一人色彩のきわだった目立つ服装で)。名札は5メートル先から名前が読める大きなものだと助かる(くれぐれも裏返しにしない。あるいは両面に名前を)。どうも健常者からは、まぬけにしか見えないような気もするので、実現はむずかしいかもしれない。


(2006-05-15)

日本細胞生物学会賛助会員

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