一般社団法人
日本細胞生物学会Japan Society for Cell Biology

Vol.29 July - December (2) 会長就任の挨拶

大野博司 (理化学研究所生命医科学研究センター)

本年6月に日本発生生物学会と合同で開かれた第70回日本細胞生物学会合同大会において、吉森保前会長の後を受け、日本細胞生物学会会長に就任いたしました。これまで4年間にわたり仰せつかってきた日本細胞生物学会誌Cell Structure and Functionの編集長は今年一杯で任期を終え、2019年1月からは吉田秀郎先生(兵庫県立大学)に後を引き継いで頂きます。この間、CSFのゴールドオープンアクセス化(CC BY)や、それに伴う投稿規定等の英文の改訂、さらにはCSFの英語版ホームページの刷新など、欧米の研究者からの投稿の確保も視野に入れた改革を行ってきました。その甲斐もあってか、投稿数も年々僅かながらも増えており、インパクトファクターも3を超えることができました(インパクトファクターについては色々な意見があるところではありますが)。

そのようなことを評価されたか否かはわかりませんが、会長職を任されることになりました。ここで私と日本細胞生物学会との関わりについて簡単に述べさせて頂きます。私は大学卒業後4年間の臨床経験(麻酔科)を経て、大学院では免疫学を学びましたが、1994年のNIH留学(Juan S. Bonifacino博士)を機に細胞生物学研究を始め、1997年の帰国に際して入会させて頂いて以来、お世話になっております。現在では、日本免疫学会と本学会が私のメインの学会となっています。その後、CSFの編集委員・常任編集委員(現在も)、評議員・代議員となり、2012年、目加田会長のときに庶務幹事として学会運営に携わるようになりました。そして、2015年に当時の貝淵会長(最後の数ヶ月は私同様CSF編集長と二足のわらじを履いておられました)からCSF編集長を言い渡され、そのときに「編集長を2期やったら次は会長というのがこれまでの流れだから」と仰有っていた通りになりました。

吉森会長の就任のご挨拶にもありましたが、細胞生物学会に限らず、昔に比べて学会の存在意義は揺らいでいます。学会など行かなくても構わないと思う方もたくさんいらしゃるのではないでしょうか。私も、特に最近の雑用の増殖と共に、そのように感じることも時にありました。しかし、自分の若い頃を思い出してみると、その道の偉い先生方や気鋭の先生方と話をしたり、最新の情報を集めたり、あるいは自分の結果を口頭発表や特にポスターで発表してそこで色々な意見やアドバイスを得たり、といったことを目的に、日本細胞生物学会に入会したことを思い出します(40近くなっていたので若くはなかったですが)。

これも吉森前会長の弁ですが、「細胞生物学会のあるべき姿は、現在の規模を保ち、若者が元気で、自由な議論ができる場であること」には全く異論はなく、これを目指して進むことで、これまでの学会運営の方向性を大きく変えることなく、吉森前会長の意志を継いでいくことになるとともに、上に書いたような(恐らく)若い研究者達が期待する学会像にも一致する方向であります。学生の大会参加費を無料化したこともあって学生会員が微増している中、細胞生物学若手の会はその求心力であり、今後も学会としてサポートを続ける必要性は自明です。吉森前会長が創った将来計画実行委員会の大きな役割のひとつは細胞生物若手の会のサポートであり、この会を潰さず続けることが吉森前会長の遺言のひとつでもあります。吉田先生にはCSF編集長の重責を負って頂くので、井垣達吏先生(京都大学)に委員長をお願いすることになりました。

学会運営には学会の経営状態が大変重要なウエートを占めるのは言うまでもありません。幸にも、CSFに関する国際競争力強化の科学研究費補助金を2017年度から5年間、日本学術振興会に採択していただきました。これでCSF出版による財政の逼迫を当面は気にせず、逆にこの補助を、CSFをより高みへと育てるチャンスと捉え、吉田編集長にはご活躍を期待しております。

また大会(学術集会)運営も、従来学会から幾ばくかの補助をしておりましたが、吉森前会長の時に基本的には学会からの補助無しで運営していただく様にきめました。それに伴い、これまでは大会長に一任していた大会運営についても、学会としてそのノウハウを蓄積して節約しながらも参加者にご満足いただける大会運営ができるように、大会長と共に努力してゆく所存です。

執行部には、副会長はしっかり者の米村重信先生(徳島大学)に引き続きお願いし、ともすると拙速になりがちな私の手綱を閉めて頂きたいと思います。庶務幹事は井垣先生になっていただき、学会の全体像を見ながら将来計画実行委員会を進めていただきたいと思います。もうお一人は加納ふみ先生(東京工業大学)にお願いし、生物科学学会連合など、首都圏で行われる学会関連の会合などをご担当いただきます。会計幹事は豊島文子先生(京都大学)にお願い致しました。今後2年間はこのような執行部体制となります。さらに、会計監査は目加田英輔先生に引き続きお願いするとともに、引き続き学会運営にご助力いただくということで吉森先生に入って頂きました。選挙管理委員長の松田道行先生(京都大学)、HP担当の引き続き原田彰宏先生にもご指導頂き、学会運営を乗り切ってゆく所存です。また事務局の金光朋子さんにはいつも助けられてばかりであり、今後ともよろしくお願い致したく存じます。

末筆ではありますが、学会は当然のことながら会員の皆様全員のものであり、その運営もまた皆様全員のお力添えあってのものです。皆様の研究に細胞生物学会を活かし、利用していただくためにも、今後ともお力添えを頂きたく、何卒よろしくお願い申し上げます。


(2018-07-11)

日本細胞生物学会賛助会員

バナー広告