一般社団法人
日本細胞生物学会Japan Society for Cell Biology

2016-10-18

松浦彰 (千葉大学大学院融合科学研究科)

この度の大隅先生のノーベル生理学・医学賞のご受賞を、弟子の一人として心からお祝い申し上げます。先生とは学部生時代に実習でお世話になって以来お付き合いさせていただいており(かれこれ30年になります)、学位を取ってすぐの時期、縁あってオートファジー研究の黎明期の先生の研究室で微力ながらお手伝いさせていただいたことが、私のささやかな自慢です。

私が研究室に所属したのは、伝説の学生塚田美樹さんによってオートファジー欠損変異株が単離された時期で、この変異株を使えばオートファジーの分子機構が明らかにできる、とワクワクしたものでした。しかし、話はそんなに甘くなく、遺伝子を順番にクローニングし、シークエンスを読めども、タンパク質の機能に関する情報は全く得られず、攻めあぐむ期間が続きました。研究室の学生たちが学会で発表するネタも、「遺伝子配列はこれです、既知遺伝子とのホモロジーはありません、欠損株は栄養増殖では正常で、飢餓培地に移すと死にます」だけだったため、座長の先生から「大隅研からの演題はまとめて質疑の時間をとります」というひどい扱いを受けたことも。ただ、これこそが大隅サイエンスの真骨頂で、まだ世界の誰も触れたことがなかった遺伝子群にたどり着いた、極めて独創的な研究だったことの証左でありました。

大隅先生の周りにはその時々に必要な優秀な人材が集まって来、その人たちが行き詰まった研究のブレークスルーを起こしています。塚田さんしかり、綺麗な電子顕微鏡写真で皆を納得させた馬場美鈴さんしかり。行き詰まっていたオートファジー遺伝子産物の機能の研究は、水島昇さんがいなかったら解明がもっと後になったことでしょう。人が集まるというのは大隅先生の人柄がなせる技です。そして何よりも、大隅先生の今があるのは、先生がオートファジー研究に「切り結んで」来られたからだと思います。この「切り結ぶ」という言葉、大隅先生の口癖で、最初聞いた時にはどういう意味だろうと思いましたが、おそらく「大事だと信じ、命がけで取り組む」という意味?。人が注目しなかった時代から、オートファジーという現象の重要性を感じ(信じ)、その現象に一途に取り組まれた大隅先生がノーベル賞を受賞されるのは、当然に思えます。

大隅先生が日本の基礎研究の将来を憂いておられることは以前から伺っており、受賞後もマスコミで積極的に発言してくださっていることに勇気づけられます。サイエンティストとしての大隅先生の生き方に励まされ、若い研究者たちが伸びやかに育っていくことを願っています。これから先、今まで以上に忙しくなられると思いますが、くれぐれもご健康に留意されますように。先生のますますのご活躍をお祈りしております。


(2016-10-18)

日本細胞生物学会賛助会員