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日本細胞生物学会Japan Society for Cell Biology

新着細胞生物学用語集(%EF%BF%BD%EF%BF%BD%EF%BF%BD%EF%BF%BD%EF%BF%BD%EF%BF%BD%EF%BF%BD%EF%BF%BD%EF%BF%BD%EF%BF%BD%EF%BF%BD%EF%BF%BD)

セプチン
【Septin】
上谷 大介・木下 専
名古屋大学大学院理学研究科 生命理学専攻 情報機構学講座
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 セプチンは細胞質分裂(septation)・細胞極性・細胞形態の異常を呈する出芽酵母変異体の責任蛋白質として同定された重合性GTP結合蛋白質とそのホモログの総称である。セプチンファミリーはRas様のGTP/GDP結合領域をコアドメインとして共有し、多くはカルボキシル側にコイルドコイル配列を持つ。セプチン遺伝子は菌類からヒトまでの真核生物で進化的に保存され、出芽酵母では7種類、線虫では2種類、ショウジョウバエでは5種類、マウスでは13種類、ヒトでは14種類存在するが植物には存在しない。セプチンは多様な組み合わせでフィラメント状ヘテロオリゴマーを形成し、さらに環状線維束を形成したり人工リン脂質膜上で2次元格子を形成するなど独特の高次集合性を持つ。セプチンを主成分とする環状構造体としては出芽酵母の分裂溝直下に形成されるセプチン・リング(septin ring)がよく研究されてきた。セプチン・リングは細胞周期進行および細胞質分裂関連分子を集積させる足場(scaffold)としての役割と、細胞膜および内膜系上を流動する膜蛋白質の非対称性分布を保つ拡散障壁(diffusion barrier)として母-娘細胞を区画化する役割を持つことが報告されている。細胞質分裂の分子機構は種間・系譜間の多様性が著しく、セプチン・リングが明確に同定できない場合も多いが、セプチンの要求性は種を超えて保存されている。多細胞生物におけるセプチンの発現はむしろ分裂後の細胞に多いため、細胞質分裂以外の機能に興味が持たれている。哺乳類においては、精子鞭毛内(輪状小体)と繊毛基部の細胞膜直下にセプチンを主成分とすると推測される環状構造体が存在し、足場・拡散障壁機能以外に細胞表層剛性維持機能を持つことが示されている。哺乳類のセプチンの一部は非筋型ミオシンと相互作用することにより、アクトミオシンを主成分とする収縮輪やアクチンストレス線維(actin stress fiber)の維持に寄与するが、詳細は不明である。ヒトでは優性変異型SEPT9 が家族性神経痛性筋萎縮症の原因となるほか、パーキンソン病、統合失調症、精子無力症では複数のセプチンの量的・質的異常が随伴する。
参考文献

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