一般社団法人
日本細胞生物学会Japan Society for Cell Biology

細胞生物学会の大きな改革

日本細胞生物学会
Cell Structure and Function編集委員長
中 野 明 彦
東京大学/理化学研究所

 本年1月に発行された会報『細胞生物』Vol.14 No.5に、『 細胞生物学会の大きな改革 』という永田和宏会長の文章と『 Cell Structure and Function の刊行体制の変更について 』という私の文章が、並んで掲載されました。覚えておられる方が多いことと思います。学会として最も重要な行事である大会にエネルギーを集中しようではないか、そのために、CSF に費やしてきたエネルギーを考え直そうではないかという提案でした。CSF は現行の隔月刊を廃止し、大会の抄録号として年1回の刊行のみを残す、という昨年11月の運営委員会の決定を受け、大きな体制変更に向けて、皆さんのご意見をお聞かせくださいと結びました。

 それに対して翌号には、本学会の元会長である田代裕先生からの『 CSF の廃刊・縮小は日本細胞生物学会の活性化に役立つのか? 』という意見が掲載されました。また他にも何人かの方から、廃刊しないで何とか続ける方策を考えて欲しいという声を伺いました。

  本年5月、高井義美大会委員長のもと大阪で開催された日本細胞生物学会第57回大会は、シンポジウムを厳選し、世界第一線級の演者に全て英語で講演をお願いすると同時に、1会場に絞り、全ての参加者が全ての講演を聞けるというスタイルを採用した最初の大会になりました。この大会の評価はこれからじっくりと検討していかなくてはなりませんが、参加者が大幅に増え、大変活気に溢れた大会になったという印象は、おそらく多くの方が感じたことではなかったかと思います。

 このように大会の活性化が成功裏に進む一方で、本学会のもう一つの重要な活動であった CSF のあり方についてもさまざまなご意見をいただき、それをどう受け止めるべきかについて、学会執行部でいろいろ議論を行ってきました。また期を同じくして、国の施策として、日本からの研究発信にもっともっと力を入れなくてはならないという動きが出てきました。日本のジャーナルが日本発の優れた研究成果の発表の場になっていないのは大きな問題であるということを、文部科学省、日本学術振興会、日本学術会議などが強く認識し始めたのです。学協会の力量に英文論文誌の強化を求める流れが起こり始めています。伝統ある雑誌の廃刊は、思い切った英断という見方もありましたが、この流れには逆行しています。

 かかる情勢を受け、私たちは、大きな経済的負担を強いたまま現行の刊行を続けるのでもなく、また廃刊という道を取るのでもない第3の方策を模索し、その結果、完全に電子ジャーナルに移行するのがベストではないかという結論にたどり着きました。冊子体での出版をやめることによって財政的な負担を減らし、また電子ジャーナルとして随時優れた論文を発表できることでむしろ雑誌のビジビリティを上げることができるのではないかという提案です。ページ数や定期刊行の制約から解放されるので、本当によい論文を随時採択していくことができます。また、採択後速やかに web に掲載することができ、これが仮ではなく正式な publication となりますので、順調に行けば投稿から発表まで1ヶ月以内という、非常に早い出版が可能になります。これこそ私たちのジャーナルとして英文誌を持つ大きな利点になるはずです。

 本年4月の運営委員会で、CSF を廃刊しないこと、電子ジャーナルとして大きく編集・刊行体制を変えることをあらためて提案し、出席者全員の賛同を得ました。そして5月の大会の評議員会では、1時間以上にわたる長く激しい議論の末、本方針が最終的に承認されました。総会でも報告し、了承が得られました。CSFはやめません。電子ジャーナルとして生まれ変わります。

 編集委員長として、CSF をどうすべきかということについては深く悩み、一旦は事実上廃刊の方針が決定しても内心忸怩たるものがありました。やめないですむものならそれに越したことはないのではないかと。また一方で、以前に会報に書いたように、日本細胞生物学会のレベルはこんなものではないはずだという強い思いがあります。続けるからにはよいものにしなくてはなりません。この完全電子ジャーナル化が一つのきっかけになって、CSF が大きく飛躍することを心から願っています。先の会報の記事では、危機感を少しでも理解してもらいたく、ほとんど引用されないような論文が多く掲載されていると書きましたが、もちろん優れた論文が少ないわけでは決してありません。 Impact Factor に振り回されるべきではないと思い、気にしないつもりでいましたが、実はごく最近発表になった2003年の Impact Factor は 1.66と前年度の 0.87 より大きく上昇しています。 PubMed へのリンクによって海外からのアクセスが増えた効果が現れているのではないかと思われます。この上昇機運を生かしていきたいものです。

 具体的にどのようなスケジュールで電子ジャーナル化を進めるかについては、今後編集委員会で詳細に詰めていかなくてはなりませんが、一応現時点では次のようなスケジュールを考えています。

  • 2004年12月まで 従来通りの冊子体による発行
  • 2004年7月~9月 移行計画と投稿規定改訂等の作業
  • 2004年10月~12月 電子ジャーナル化の告知
    (会員および本誌を購読している図書館等に対して)
  • 2005年 1月より 電子ジャーナルとして随時オンライン掲載
    冊子としての発行は基本的に廃止 (図書館向けは要検討)

 完全電子ジャーナル化する以上、投稿や査読も全てオンラインでできるような体制を目指しますが、それにはもう少し時間がかかりそうです。

 また、印刷や送本にかかっていた費用は大幅に節減できますが、一方で科研費によるサポートは当面難しくなることが予想されますので、編集にかかる費用と手間をいかに抑えることができるかが重要な問題になります。慎重に計画を練り上げていきたいと思います。

 雨降って地固まると言います。 CSF の存続に関しての今回の大きな議論が、本誌のさらなる発展につながることを心から願いつつ、皆様の優れた論文の投稿をお待ちしたいと思います。

 年内は従来通りの刊行を続けますので、電子化の前でもぜひともよい仕事をお送りください。表紙を飾るチャンスは残念ながらあとわずかです。

日本細胞生物学会賛助会員