一般社団法人
日本細胞生物学会Japan Society for Cell Biology

「海外研究室だより」Vol.12 Kaufman研究室へようこそ!!

榊 建二郎(Kenjiro SAKAKI Ph.D.) (ミシガン大学医学部生化学部門Randal J. Kaufman研究室(現所属:東京女子医科大学 医学部 第2生理学教室 講師 ))

・特定領域研究「タンパク質の一生」ニュースレターから転載

(*Randal J. Kaufman教授が2011年春をもって、ミシガン大学からSanford|Burnham医科学研究所(La Jolla, CA)に異動になりました。)

はじめまして。ミシガン大学のRandal J. Kaufman研究室でポスドクをしております、榊建二郎と申します。この度、遠藤先生より、本項執筆の貴重なお話を頂きまして、まだ渡米して2年足らずの私ではありますが、有難く寄稿させて頂くことになりました。留学生活のことなども織り交ぜながら、Kaufman研究室、ミシガン大学、そして私の住む街アナーバーについて御紹介させていただきます。

アメリカ有数の安全な学園都市、アナーバー

ミシガン大学は自動車産業で有名なデトロイト(Detroit)から約40マイル西方に位置する人口約10万人の学園都市・アナーバー(Ann Arbor)にメインキャンパスがあります。デトロイトは、GM、フォードなどの自動車会社が本社を構え、かつてはMotownとして一世を風靡した時代もあったらしいのですが、90年代前半のアメリカ自動車産業の不況と共に浮浪者が急増し、現在ではアメリカ最悪の犯罪都市として、中心街を除けば廃墟ビルが立ち並び、地区によっては運転中に赤信号でも止まらない方が良いと言われる場所もあり、遂には映画「ロボコップ」の舞台として、劇中でロボコップが大活躍できてしまうほどの超危険地帯です。

その一方で、デトロイトの滑落と共に、上流層の市民が流出したこともあり、周辺の衛星都市は非常に安全でして、アナーバーもそのひとつだと聞いております。殊にアナーバーは人口の7割以上が大学関係者ということで、教育熱心な家庭が多く、生活水準も高く、デトロイトとは対称的にアメリカ有数の治安の良い街として、かつてはアメリカ人の「住んでみたい街ランキング」の栄えあるNo.1に輝いたこともあるそうです。自然が豊富で、市内には幾つものゴルフコースがあり、街の真ん中を流れるHuron Riverでは、夏場はカヌーやカヤックが楽しめます。リスはもちろんのこと、街のやや外れにある大学の職員住宅街では、アライグマ、ウッドチャック、スカンク、シカ一家(!)などなどの野生動物が頻繁に出没します。また、のどかな雰囲気の一方で、学園都市として大学施設と街が一体化し、中心街には映画館や劇場、美術館があり、お洒落な雰囲気のレストランなどが並ぶMain Streetには若者がいつも溢れ、活気があり、文化的な生活を営むこともできます。ミシガン大学には世界140カ国以上から学生・研究者が集っていることもあり、その国際色を反映してか、街のアメリカ人は非常に親切で、特に英語に不慣れな日本人にとっては、とりわけ快適さの重要な要素のひとつのようにも思えます。

ミシガン大学はカレッジフットボールが盛んでして、街の一番のご自慢は、11万人収容のアメリカ最大のアメリカンフットボール場、Michigan Stadium(通称:Big House)です。ミシガン大学アメフト部 Michigan Wolverinesは全米屈指の強豪校でして、2003年、2004年シーズンは所属するBig-Ten Conferenceを制しました。Big Houseでの試合の日はいつも盛り上がるのですが、中でもMichigan州立大学やOhio州立大学などの近隣の強豪チームと対戦する日は、街中ミシガンフットボール一色になります。試合前日、金曜日の研究室内では「明日の試合、観る?」が合言葉のように交わされ、当日は当然のように誰もラボに来ません(少なくとも米人は)。最近では週末明けの話題のために、私もテレビで試合をチェックするようにはしてはいますが、野球とアイスホッケー好きの私には、選手の名前など話題についていけないことも多く、「日本に帰れ!」と、冗談交じりで冷やかされることもしばしばです。

この他にも、アメリカ最大の芸術の祭典Ann Arbor Art Festivalが毎年7月初旬に行われ、公式発表では約50万人の人がこの街を訪れるそうです。中心街は歩行者天国として封鎖され、数々の露店が並び、1年の中でこの街が最もにぎわう時を迎えます。それから、2004年に改装オープンしたばかりの公会堂Hill Auditoriumもまた、この街のご自慢の一つでして、ミシガン大学が誇るUM Symphony Orchestraが毎年1月に大きなニューイヤーコンサートを行うほか、各国から様々な音楽家が訪れ、国際色豊かなイベントを行います。それからデトロイトには全米4大スポーツが揃っており、プロスポーツ観戦も十分に楽しめます。中でもNBA(バスケット)のDetroit Pistonsは2年連続で東地区を制覇し、2003-2004シーズンはLakersを下し、全米チャンピオンに輝いているほか、NHL(アイスホッケー)のDetroit Red Wingsは数多くの全米代表メンバーを抱えるスター軍団で、過去に数々のタイトルを獲得し、2005-2006シーズンも首位を疾走中です。また、84年の優勝を最後に、街の衰退と共に低迷が続くMLB(野球)のDetroit Tigersの本拠地コメリカパークには、2005シーズンのチャンピオンで井口選手が所属するシカゴホワイトソックス、イチロー選手のシアトルマリナーズが年に数回、独立記念日の頃には松井秀喜選手が所属するニューヨークヤンキースがやってきまして、デトロイト周辺に住む約3000世帯の日本人の楽しみとなっています。


Randal J. Kaufman研究室

ここまで前振りとして、ミシガン大学を囲む環境についてご紹介させて頂きましたが、次に私が所属するKaufman研究室についてご紹介させていただきます。

本稿をお読みになられる先生方に対して、私のような若輩者が改めて講釈させていただくのは誠に恐縮ではありますが、私達の研究室を紹介するにあたり、主要研究テーマであります小胞体ストレス応答(UPR)について簡単にご説明させていただきます。小胞体機能異常による小胞体内での蛋白質フォールディングの低下、それに伴う構造異常蛋白質の蓄積に起因した「小胞体ストレス」に対して、細胞は(1)eIF2?のリン酸化を介した、一過的な翻訳抑制、(2)小胞体内分子シャペロンや小胞体関連蛋白質分解(ERAD)に関わる因子の転写レベルでの遺伝子発現誘導、の主に2つの応答を行います。これらの応答は、翻訳抑制により小胞体内への新生蛋白質の流入を抑え、その一方で、小胞体内での蛋白質フォールディングの許容量を上げ、これらのバランスを保つことにより、小胞体内での蛋白質フォールディングの精度を維持し、また、小胞体内に発生した構造異常蛋白質を速やかに分解することにより、細胞に有害な蛋白質凝集体の蓄積を抑制するという意味において重要と考えられており、糖尿病や脳虚血、アルツハイマーなどの神経変性疾患などとの関与も示されていることから、臨床面においてもその研究の重要性が高まっております。UPRをつかさどる因子としては、代表的なものでPERK, ATF6, IRE1といった小胞体膜蛋白が知られております。PERKは翻訳抑制におけるeIF2? kinaseとして働き、ATF6はS1P/S2Pを介した切断とbZIPドメインを含む細胞質部分の核移行によりERSE(ER Stress Element)を介した小胞体シャペロン遺伝子の発現誘導を行い、IRE1が転写因子XBP-1(出芽酵母ではHAC1)のmRNAスプライシングを活性化することにより、UPRE(UPR element)を介して小胞体シャペロン遺伝子以外に、ERAD関連遺伝子やリン脂質合成系の遺伝子発現誘導を行います。(詳しくはシャペロンニュースレター2005年3月号の森和俊先生と河野憲二先生のMini Reviewをご参照ください。)

Kaufman研究室は現在、PIのKaufman先生、ポスドク7名、大学院生3名、テクニシャン3名、秘書1名の15名に加え、各ポスドクに1?2名の学部学生がついており、合計約20名強にて稼動しております。おそらくアメリカの研究室としては、大所帯なのではないでしょうか。主にUPRについての研究を主要テーマとし、各人がそれぞれの興味に従って研究を行い、それぞれが少しずつオーバーラップしながらIRE1/XBP-1経路、ATF6経路、PERK経路のそれぞれに配分されています。

研究室の主なメンバーについて簡単にですがご紹介させていただきます。PIのRandal Kaufman先生は研究者としても優れた方なのですが、少々やんちゃな面もありまして、そんなところも彼のボスとしての魅力のように思います。秘書のJanはハンディ持ちの旦那さんの介護と、ハードな秘書業を見事に両方こなす、パワフルウーマンです。ポスドクのDonalynはPERK/eIF2?経路のマウスでの解析を仕切っています。あまりに英語が流暢過ぎて、時に会話に困ることもありますが、ともかく朗らかな方です。Tomは私と同い年のポスドク。PERK下流での細胞の生死のスイッチングを研究しています。最近2児のパパになりました。Bobは私と背中合わせの席にいるラボマネージャーで御歳64。優しくも厳しいアメリカの父親といった感じでしょうか。この2人は私のモーニングコーヒーの友でもあります。ポスドクのSungはeIF2-alphaの変異体マウスの作成を手がけております。Junは大学院生。学位取得に向けて猛実験に励んでいます。この2人が、だいたい私と同じく遅くまでラボに残って仕事をしています。Kezhongは後述CREB-Hに関する仕事をまとめたポスドクです。何時も穏やかに人と接する人間性が魅力です。Jyotiは血液凝固VIII因子の生合成に関する研究を行っています。日本人の友人が多いらしく、好物は天ぷらと牛丼。Andrewは最近入って来ましたポスドクです。同じく血液凝固因子の仕事をしております。KateはTomに付いて仕事をしている大学院生。ミシガンフットボールの大ファンです。Markは私と同い年の大学院生。現在、新婚ホヤホヤでホックホクであります。テクニシャンのBenboは聖書をこよなく愛するクリスチャン。ご自宅に遊びに伺ったのですが、カラオケセットとビリヤード台に加え、卓球台も持っているところ、さすが中国人です。Junyingは最近入ってきたテクニシャン。どういう訳だか私の稚拙な英語力をやたら誉めてくれます。皆さん、非常にフレンドリーな方々でして、とっても楽しい研究室です。

進行中のテーマについては詳しく触れることが出来ないのですが、最近publishされたトピックスについて2つ挙げさせていただきます。

私達の研究室では、主要テーマのひとつとしてPERKによるeIF2?のリン酸化と糖尿病との関係について、マウス遺伝学を用いて研究に取り組んでおります。哺乳動物においては、PERK変異がインスリン分泌細胞である膵臓?細胞の細胞死を介して糖尿病を起こすことが、ヒトのWollcot-Rallison病、およびモデルマウスの研究より明らかにされている一方で、PERK以外の3種類のeIF2? kinase(GCN2、HRI、PKR)の欠損マウスについては?細胞不全が観察さません。またeIF2?のリン酸化部位(Ser51)にhomozygous置換変異をもつ変異体マウスでは重篤な?細胞不全により生後24時間以内に致死であることからも、?細胞機能においてPERKによるeIF2?のリン酸化制御が重要であるといえます。私達の研究室ではeIF2?のリン酸化部位におけるheterozygousな変異マウスが通常状態では正常であるのに対して、高脂質食(HFD)を与えた場合、血中グルコースの上昇、インスリン分泌量の減少など糖尿病の表現型を示し、さらに電子顕微鏡により、HFD給餌条件下では?細胞の小胞体が肥大化し、その中に高電子密度の凝集体が蓄積することを見出し、多量の脂質やグルコースを摂取した際におけるインスリン生合成の誘導過程において、PERKを介したeIF2aのリン酸化制御の重要性を生理的に示しました(Scheuner et al, 2005)。

もうひとつ、最新のトピックスですが、最近ATF6と同様に膜貫通部分の切断により活性化され、同様の役割を果たす転写因子が報告されつつあります。そのような転写因子のひとつとして肝特異的な遺伝子であるCREB-Hに私達の研究室では注目し、ゴルジ体でS1P/S2Pによる切断を受け活性化し、肝組織でのAcute Phase Responseに重要であるということを示しました(Zhang et al, in press)。興味深い点としては、ERストレスによりCREB-Hが活性化し、CBPなどのAcute Phase Responseのマーカー遺伝子の発現を誘導するのですが、この部分にATF6が関与し、協調的に働くという点です。ちょうど私がこの研究室に来た2003年末に興味深い観察結果が得られ、ポスドクのKezhongが精力的に解析を進め、大仕事にまとめました。いずれCellに掲載されますので、詳しくはそちらをご覧ください。

さて、私の研究テーマについても、簡単にですが宣伝させていただきます。私達の研究室では、世界に先駆けてUPR研究における遺伝学的解析のモデル生物として、線虫C.elegansの系を立ち上げました(Shen et al, 2001)。線虫独特のモデル生物としての利便性に加え、マウスにおいてはIRE1, ATF6, PERKのhomozygous mutantは致死なのですが、線虫においてはそれぞれの欠失変異は基本的に正常に生育するため、遺伝的な解析を行うにあたり有利である点が、モデル系としての魅力的な点です。線虫のUPRにおける大きな特徴は、ire-1変異体はatf-6あるいはpek-1(PERK)変異に対して合成致死性を示し、さらに致死過程において腸管細胞の壊死が観察される点です。私はこの点に注目し、UPRの活性化を調節する遺伝子の同定に主眼をおいて、網羅的なRNAiスクリーニングを行い、ire-1やpek-1と遺伝的相互作用を示す遺伝子群を同定しました。現在、さらに絞込みを行う一方で、この遺伝子群から垣間見えてきた、UPRと遺伝的相互作用をしめす細胞機能について解析を行い、ERストレス環境化において、UPRと他の細胞機能がどのように協調的に働き、適応化を図るかという点にも興味を持って取り組んでおります。最近の私達が行った線虫のマイクロアレイ解析の結果から、哺乳動物と異なり、線虫においてはUPR応答遺伝子のほとんどがire-1/xbp-1経路に制御されていることが分かってきたため(Shen et al, 2005)、私の仕事においても常に哺乳動物を意識しながら進めなくてはならず、哺乳動物細胞を用いた細胞生物学的な解析と同時進行(どちらかといえばこちらに重きを置いて)で解析を行っております。


留学生活を通して得たもの、感じたこと

さて、渡米して早くも2年の月日が経ちました。最後に、現時点での留学生活を通して、私なりに得たことや感じたことについて、簡単にですが記させていただき、本稿を締めさせていただきます。ただ、環境や経験も、それらに対する感じ方も人それぞれですので、もし異論がございましても読み流していただければ幸いです。

まずは生活面。外国人、とりわけ英語が母国語でない日本人にとって、英語力は生活上の大きな悩みのひとつでして、例外でなく私にとっても大きいものでした。私が渡米したのは2003年12月。九州で長年暮らした私にとって、真冬の大雪もマイナス20℃の極寒も新鮮で、見るもの全てが真新しく、英会話学校で習得した付け刃の英語が少しばかし通じることが嬉しくて仕方なく、旅行者気分で最初の半年間は過ぎました。私の中で大きな「言葉の壁」を感じたのは、研究室のメンバーと仕事上の簡単なディスカッションはできても、人としての本質的な会話に全く参加できず、本当の意味で溶け込めていない自分に気付き、得も言えぬ孤独感に襲われたときでした。私にとって幸運だったのは、研究室内の仲間達が、私の話す稚拙な英会話に対して、時間はかかっても、じっくりと付き合ってくれたこと。モーニングコーヒーやランチに積極的に誘ってくれて、会話の相手をしてくださいましたし、普段の会話やセミナー中の質疑で、英語的によく分からずに適当な返事をしたときには厳しく注意されたこともありました。しかし、上手に会話できなかった自分に対して、優しくも厳しくも、人として、研究者として、正面からじっくりと付き合おうとしてくれている気持ちは伝わってきましたし、この場所でも何とかやっていけるという大きな自信にも繋がりました。今でも相変わらず極めて怪しげな英語を喋っているものの、ゆっくりですが、人としての会話が出来るくらいまでは成長しつつあるように思います。この先、英語さえ通じる場所であれば、どうにかこうにか生き延びていけるという自信が身についたというのは、将来的に色んなシーンにおいて役立つのではないかと思います。

それから、生活面での適応という部分において、同じような環境で暮らす日本人研究者の仲間ができたことも大きかったです。言葉も生活習慣もことなる場所で生活するわけですから、色々と戸惑うこともありますし、それまでの常識からでは考えられないような経験をしたこともありました。こういった部分での驚きというのは、この国で生まれ育ち、それを常識と捉えているアメリカ人にはなかなか理解されませんし、大同小異で似た環境から来た日本人同士の方が理解しあえる部分はありますし、彼らの経験が参考にもなります。日本人に比べて言葉のハードルが低いと思われる他の外国人留学生も、同民族同士で寄り集まる傾向があるのは、そういった理由もあるのかもしれません。「留学」という言葉の響きから、日本人同士の付き合いは無駄なようにも聞こえますし、それに偏りすぎるのも確かに問題ですが、異国での生活に順応し、自分なりのリズムを掴む上において、非常に大きいようにも思います。

研究環境におきましては、渡米当初は全てが必要以上に大きく見えて、少々気後れしてしまったこともありましたが、気が付けば日本とそれほど代わり映えしない日常を送っていることを考えると、それほど日本と大きな開きがあるわけではないと思います。こちらの特徴を挙げるとすれば、ひとつは実際の研究現場が、これほどまで中国人やインド人を筆頭とした外国人研究者で占められているものとは思いませんで、ちょっとした驚きではありました。例えば、私の研究室ではポスドクと院生の半数は外国人ですが、他の研究室を見渡せば、ほぼ全員が外国人という研究室も決して少なくありません。最近、サンフランシスコ滞在時に、シリコンバレーは完全にインド人に占められてしまったと、地元の人が漏らしていたことがありました。案外、この国の科学技術はこういった外国人労働者の働きなくしては、成立し得ないものだといっても過言ではないように思います。そして、こうして集まってきた外国人に対しても、業績さえ出せば独立したラボを構えるチャンスが与えられるといった点は、この国の懐の深さだとも感じます。ただ、この点については対称的に、日本は独自の力で、数十年という短期間で科学立国として成長し、業績面でも欧米に十分に太刀打ちできていることは、日本の誇るべき点だということも、こちらに来て感じました。

もう一つの特徴として挙げるのであれば、徹底した効率至上主義。その象徴のひとつがCore Facilityではないかと思います。大学が準備した共有施設があり、例えばDNAシークエンシングであれば、解析用のDNAサンプルとプライマーを渡せば、後は常駐している技官さんが全てをやってくださって、2日間で結果が電子メールで知らされます。私の知る限りでミシガン大学内にマウス管理、トランスジェニックマウス作成、DNAシークエンシング、Gene Chip解析、電子顕微鏡解析などにおいて共用施設があり、必要な材料を渡せば,あとは技官さんが必要なところまで進めてもらえ、当の本人は別の実験に取り組むことが出来ます。もちろん無料ではありませんで、それなりのお金がかかりますが、一つの研究室が設備を整え、技術を養うための資金や手間を考えれば、効率のいいシステムのように思えます。試薬関係でも、いわゆる購買部がありまして、汎用性の高い酵素、試薬、キットなどが揃っていまして、必要なときにちょっと階下まで出かけて買ってくるといった感じです。そのラボの予算状況にもよりますが、これらのシステムをいかに上手に利用するかは、仕事の効率上、とても重要なことのように思います。

私個人が留学生活を通して得たものは、それまで興味を持ってきたUPR分野においては大御所とよばれる研究室のひとつであるKaufman研に来て、ディスカッションにおけるアグレッシブさやプロダクティブな雰囲気に触れ、ポテンシャルの高いポスドクと接する機会が得られたこと。その中で、研究者として、人として、周囲と接することで、まだまだ成長途上ですが、それでも海外に出て行って十分やっていけるだけの自信が付いたこと。それから、日本とアメリカの研究現場や日常生活での違いや距離感いったものを通して、日本とアメリカのそれぞれの良さを、実際に経験して身をもって実感できていることではないかと思います。これからさらに、どういったことを経験し、何を得ていくのか、とても楽しみです。

最後になりますが、三原勝芳先生をはじめ、留学への流れの中で色々とご助言くださいました全ての先生方。渡米当初に一喜一憂していた私の電話やメールに、大人の対応で付き合ってくださった九大・三原研究室の皆さんをはじめ全ての方々(お騒がせしてすいません)。海外生活で、ホッと一息つけるような楽しい時間を共に過ごしてくださっているミシガン大学の日本人研究者の皆さん。それから何より、「研究室紹介」と聞いて集合写真に付き合ってくださり、解読不能な暗号でしかないこの日本語原稿を興味深げに覗きこみつつ、手伝おうと試みてくださったKaufman研のラボメンバーに感謝しつつ、本稿を締めさせていただきたいと思います。駄文にお付き合いいただきまして、誠に有難うございました。

2006年1月6日

榊 建二郎
ミシガン大学医学部生化学部門Randal J. Kaufman研究室

(2012-12-19)

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